邦題考5

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配給会社が外国映画の日本公開にあたって付ける邦題にケチをつけるという企画の第5弾。なお、この「邦題考」の★は、映画ではなく日本語タイトルの評点で、★3つは可もなく不可もないことを表します。

2001/4/3

『サイコ2001』"Complicity"
原題は「共謀」、「連累」などの意味。イアン・バンクスの同名の小説の映画化だが、訳本には『共鳴』というタイトルが付いていた。この映画が「サイコ」とまったく無関係なのはもちろんだが、「2001」も関係がない。製作年は1999年で、たまたま日本でビデオ化されたのが2001年だったに過ぎない、『ブラボー火星人2000』と同じ路線のバカ邦題である。映画の出来が悪いがゆえの苦肉の策だろうが、イアン・バンクスがこのことを知ったら泣くと思うよ。★

『最終絶叫計画』"Scary Movie"
「ホラー映画」。われわれが普通に口にするところの「ホラー映画」を指す一般名詞だが、特に「スプラッター映画」あるいは「スラッシャー映画」のことを指す。いきなり冒頭に、「お前の好きなscary movieは何だ?」と電話で殺人鬼に問われた女が、シャキール・オニール主演の"Kazaam"(邦題は『ミラクル・アドベンチャー/カザーン』)を口にするというギャグがあるが、この場合でも「ホラー映画」という訳は妥当だろう。「シャキールの演技、あれってホラーよ」という感じ。邦題は、無理に盛り上げようとした痕跡だろう。日本のアニメかなんかとのつながりがあるのかもしれないが、その面については明るくないもので。★

『ルール』"Urban Legend"
「都市伝説」。1980年代頃からポップな文化人類学の研究対象となった、現代社会において流布している伝説のこと。本作では、殺人鬼が都市伝説のプロットに則って殺人を犯していく。DVD版の日本語字幕には2回「ルール」という言葉が出てくるが、そのどちらでも"rule"なんてセリフは発せられていない。『バタリアン』級のバカ邦題である。なお、"urban legend"という言葉だが、この映画の舞台は田舎。もともとアメリカの"urban legend"の少なからずのものが、田舎あるいは郊外地を舞台にしている。★

『英雄の条件』"Rules of Engagement"
「交戦規則」。アメリカの軍隊が交戦するときの規則のこと。この映画では特に市街地域(urban area)における戦闘の交戦規則が問題となり、海兵隊大佐のサミュエル・L・ジャクソンがこれを法廷で暗唱する場面が出てくる。映画のテーマは、このような交戦規則は現場を知らない政治屋たちが勝手に作ったものであり、国外で戦うアメリカ人兵士の命を軽視している、というタカ派的なものである。邦題は、どうでもいいや。★

『マチルダ』"Matilda"
ロアルド・ダール原作の子供向け小説の映画化。原作のタイトルは同じだが、評論社から出ている訳本には『マチルダはちいさな大天才』という日本語タイトルが付いているようだ。主人公の少女の名前がマチルダ。この子がマクロPKを駆使して、悪い校長先生をやっつける。★★★

『大列車作戦』"The Train"
1960年代の映画なんで、この邦題も仕方がないとは言え、え〜、もともとこれは『大列車強盗』"The Great Train Robbery"に引きずられて付けられたタイトルだと思うが、この場合の「大」は「強盗」に付いているんである。ところが「大列車作戦」だと、「大きな列車」があるように見える。作戦が大きいのならば「列車大作戦」の方が正しいはずだ。ナチス占領下のフランスにおける、列車の運転手を巡るレジスタンス映画。たしかにその作戦は「大作戦」と呼ぶにふさわしい。★★

『トイ・ストーリー』"Toy Story"
オモチャの人形たちが主人公のフルCGアニメーション。★★★

『第一目撃者』"Without Evidence"
「証拠なしに」。実話をベースにした犯罪告発もの映画。オレゴン州の矯正局局長が殺害され、その弟が警察の捜査に疑問を抱いて独自に調査をすると、隠蔽工作らしいものが見えてくる。でも証拠はない。邦題の『第一目撃者』は意味不明。★

『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』"Universal Soldier: The Return"
1992年の『ユニバーサル・ソルジャー』"Universal Soldier"の続篇。この場合の"universal"は、「万能型」の兵士という意味だろう。なお、映画の中で、このサイボーグ兵士のことが「ユニソル」と呼ばれていた。ヴァン=ダムのお墨付きがあるので、この映画のことは「ユニソル」と呼んでよろしい。★★★

『アウト・オブ・タウナーズ』"The Out-Of-Towners"
「お上りさん」。これはリメイクで、オリジナルの1970年の同名の映画の邦題は『おかしな夫婦』だったが、これは出演者のジャック・レモンの2年前の『おかしな二人』"The Odd Couple"の柳の下の泥鰌を狙ったもの。要するに「おかしな」が、ときには「おかしなおかしな」が映画のタイトルとしてワクワクさせるような時代があったのだ。田舎から出てきた夫婦がニューヨークの都会で大変な目に遭うという話。★★★

『ハーシュ・レルム』"Harsh Realm"
TVシリーズ。「苛酷な領域」。物語中のVR的な軍事シミュレータを指す固有名詞である。★★★

『ER 緊急救命室』"ER"
TVシリーズ。要するに"emergency room"のことだが、これの訳語としては「緊急治療室」の方が一般的だと思っていた。パラメディックのことを「救命士」と呼ぶのが変に思えるのと同じで、「救命室」ってのはちょっと傲慢に見える。「救命ボート」は許すけどさ。★★

『セイヴィア』"Savior"
「救済者」。キリストを指すときは「救世主」である。デニス・クエイド演じる兵士が、ボスニア紛争時のユーゴスラヴィアで赤ん坊を助ける。本人はその積もりがなかったのだが、いつのまにか、というタイプの話。アメリカ資本だが、役者とスタッフの大部分がユーゴスラヴィア人(という呼称が適切なのかどうかわからないが)で占められている、けっこうシリアスな映画だった。★★★

『ハンネス、列車の旅』"Zugvoegel.. Einmal nach Inari"
ビデオ化に際してのタイトルは『逃走特急 インターシティ・エキスプレス』という悲惨なもの。原題の"Zugvoegel" (oeはoのウムラウト)は、「列車マニア」のこと。"Zug"は「列車」、"Vogel"は「鳥」である。「鉄ちゃん」という日本語もあるか。副題の"Einmal nach Inari"は、"Inari"は目的地であるフィンランドの田舎町の名前。"nach"は移動の方向を表す"to"のような前置詞。"einmal"は"once"、すなわち「1回」だが、間投詞として無意味に使われる言葉で、全体の意味としては「鉄っちゃん、ふらっとイナリへ」というていど。こういう感じの、気を抜いた印象のタイトルである。主人公の名前が「ハンネス」。ヨーロッパの列車網を使って、ドイツのドルトムンドからフィンランドのイナリへと旅をする。それを執念深い刑事が時刻表を見ながら追いかける。★★

『ファイナル・デスティネーション』"Final Destination"
高校生たちが修学旅行でパリに行こうとするが、飛行機事故のために行けなくなる。そのパリが「最終到着地」、「最終目的地」である。ストーリーの展開の「最終的に行き着く先」という意味ももちろんあるだろう。★★★

『クリムゾン・リバー』"Les rivieres pourpres"
フランスのジャン=クリストフ・グランジェの小説の映画化。IMDBには、英語のインフォーマルなタイトルとして"The Crimson Rivers"というのが記載されているが、小説の訳本のタイトルは"Blood-Red Rivers"だ。ただし"pourpre"は「紫」ではある。非英語圏のタイトルを英語にしてカタカナにするという失礼な邦題の1つ。タイトルの意味については、映画そのものの内容がそうであったように不明だけれども、この「川」は複数形であることに注意。★

『ハート・オブ・ウーマン』"What Women Want"
これも恥ずかしい邦題だな。「女が望んでいるもの」だとポルノ映画のタイトルになってしまうが。メル・ギブソン演じる主人公が、女性の心の中の声を聞けるようになってしまうという話。「男は女性の欲求に無関心である」というクリシェを反転させたもの。邦題は、まあどうでもいいと言うものの、「ウーマン」という単数形はまずいし、冠詞もないというだけでなく、メル・ギブソンが聞いているのは明らかに「ハート」ではなく「マインド」であるという問題がある。★

『イーナちゃんとテディベア』"En liten julsaga"
スウェーデン映画。"en"は不定冠詞。"liten"は「小さい」。"jul"は「クリスマス」で、"saga"はいわゆる「サーガ」、要するに「お話」。「クリスマスの小さなお話」ということになる。英語タイトルは"Little Christmas"。劇場未公開の子供映画で、『ロッタちゃんとと赤いじてんしゃ』や『ロッタちゃん はじめてのおつかい』などのロッタちゃん人気に便乗してビデオ化されて、こういう邦題になったのだと思われる。たしかに主人公の少女の名はイーナちゃんで、熊のぬいぐるみの運命がストーリーの中核を担っているが、あれっていわゆる「テディベア」じゃないんじゃなかろうか? ちなみに、そのぬいぐるみの名前は「ノーノー」。★★

『ザ・ハリケーン』"The Hurricane"
なるほど、これには「ザ」が付くのね。本作は"The Hurricane"という渾名を持つプロボクサー、ルービン・「ハリケーン」・カーターの冤罪を巡る、実話をベースにした映画。自然現象のハリケーンを題材にした1937年の"The Hurricane"とその1979年のリメイク"Hurricane"は、どちらも邦題は『ハリケーン』である。★★★

『グッバイ20世紀』"Zbogum na dvadesetiot vek"
これはマケドニア映画。原題の意味はわからないのだが、英語タイトルは"Goodbye, 20th Century"である。20世紀の終わりをテーマにする世紀末映画だが、内容はぶっとんでいる。★★★

『ゴースト・ドッグ』"Ghost Dog: The Way of the Samurai"
フォレスト・ウィテカー演じる主人公の殺し屋が「ゴースト・ドッグ」という渾名を持つ。副題は、「剣道」、「茶道」、「華道」などの意味での「侍道」。『葉隠』の引用が行われる勘違い日本テイスト映画である。★★★

『ハーモニーベイの夜明け』"Instinct"
「ハーモニーベイ」は、アンソニー・ホプキンス演じる生態学者が入れられている刑務所の名前。"instinct"すなわち「本能」は、この学者が人間と動物の本能について思索を巡らせていることを指すと思われる。この原題は良いタイトルとは思えないが、映画自体もダメ。邦題は、刑務所ものという点が共通する『ショーシャンクの空に』との連想を狙った商法だろうが、夜明けはあったっけ?★

『FAIL SAFE 未知への飛行』"Fail Safe"
これはリメイクのTVドラマで、オリジナルの1964年の映画と原作小説のタイトルは"Fail-Safe"、映画の邦題は『未知への飛行』だった。"fail safe"とは、失敗/故障しても安全なような仕掛けを施しておくという安全工学上の概念である。本作は、冷戦下の全面核戦争を回避するためのフェイル・セイフの仕掛けそのものがフェイルする(うまく行かない)状況を描いている。オリジナルの映画が日本公開されたのは1982年のことだが、その時点では「フェイル・セイフ」という日本語はこなれていなかったかもしれない。「未知への飛行」は、うーむ、どうなんでしょうか。核を積んだ爆撃機がモスクワに向かっており、それを呼び戻すことができないという状況のことを指しているんだと思われるが、宇宙探検もののSFに見える。★★★

『マイ・ハート、マイ・ラブ』"Playing By Heart"
この邦題は恥ずかしいなあ。原題の"by heart"は、「暗記して」という意味だが、もっと広い意味も持たされていることだろう。1980年にボブ・クラーク監督の『マイ・ハート マイ・ラブ』という映画があるが、あれは原題が"Tribute"だった。★

『13デイズ』"Thirteen Days"
キューバ危機の13日間のことを指す。これはやはり「さーてぃんでいず」と読むんだろうな。昔ならば「十三日間」となっただろう。『愛の7日間』、『恐怖の五日間』、『恐怖の三日間』、『恋の十日間』、『五月の七日間』、『戦慄の七日間』、『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』、『80日間世界一周』、などのタイトルが存在する。「13デイ」にならなかったのがありがたい。★★★

『追撃者』"Get Carter"
シルヴェスター・スタローン演じる男がCarterという名前。「Carterをやっつけろ」みたいな、Carterさんに無茶苦茶にやられる悪者たちの側から見たタイトル。日本語の「追撃」は、敗走する敵を追いかけてやっつけるという意味だと思うが、本作に合っているかどうかは微妙なところ。たしかに追いかけはするんだが、むしろ銃弾が飛び交う場所に「迷いこんできた」という印象の方が、少なくとも最初のうちは強い。★★

『鬼教師ミセス・ティングル』"Teaching Mrs. Tingle"
この"Mrs."は、「田中先生」みたいにつける「先生」である。映画の中では、Mr. Tingleはどうなったのかという話が出てくることが、教師と生徒の関係が無化されたことの1つの象徴として使われている(というのは私の深読みかもしれない)。ヘレン・ミレン演じるTingle先生はまさに「鬼教師」なのだが、生徒たちが反逆して、彼女に"teach"する。「教訓を与える」とか「目に物を見せる」とか「思い知らせてやる」というようなニュアンスか。この邦題の「鬼教師」は適切であり、いいと思う。★★★★

『ジェーンに夢中!』"Pictures of Baby Jane Doe"
別タイトルとして"Jane Doe"というものもあるようだ。"John Doe"と"Jane Doe"は身元不明の人のことを指す言葉。この映画では、カリスタ・フロックハート演じるJaneという女性が、主人公の作家のもとにふらっと訪れて居着いてしまう。奔放で不安定な行動をするその彼女のあり方が"baby"的であり、そのいろいろなあり方が、日本語でいうところの「肖像」"pictures"である。ただしこの映画では、実際に主人公がジェーンをモデルにして写真を撮っている。邦題はやたら明るいコメディ映画を連想させるが、これは報われないマーケティング努力で、実体はかなり陰気なインディー映画。ただし、私はけっこう好き。★

『レッド・プラネット』"Red Planet"
「赤い惑星」は火星のこと。火星探検隊の話である。★★★

『アンナと王様』"Anna and the King"
1946年の"Anna and the King of Siam"は『アンナとシャム王』、1956年の"The King and I"は『王様と私』である。どうもこの「王様」ってのはもはやギャグにしか使えず、梅宮アンナとロッカーの「王様」が並んでいる安っぽい映像が浮かんできて辟易するのだが、『アンナと王』にするわけにも行かないから仕方がないか。『アンナと国王』ならばどうだろう? アンナは英国人女性の名前、王様はシャム(いまのタイ)の国王のラマ四世のことである。考えてみると「シャム王」ってのも結構厳しい。★★★

『ザ・ビーチ』"The Beach"
タイの秘境にある美しい砂浜のこと。そこに西洋人のコミューンがあるというパラダイスもの。「ビーチ」にはならないわけね。★★★

『ブルー・ストリーク』"Blue Streak"
「稲妻のように速い」、「電光石火」という感じの意味。★★★

『ジャック・サマースビー』"Sommersby"
主人公のリチャード・ギアが演じる人物の名前。なんで邦題にわざわざ「ジャック」を付けたのかはよくわからないが、『サマースビー』だけだと人の名前だということがわからないという配慮があったのかもしれない。もちろんジョディー・フォスターが演じる奥さんもサマースビーさんなわけだが、原題は単数形なので「ジャック」の方のみを指しているだろう。これはリメイクで、オリジナルのフランス映画のタイトルは"Le retour de Martin Guerre"。「Martin Guerreの帰還」である。★★

『スライディング・ドア』"Sliding Doors"
主人公の女性が、ロンドンの地下鉄に乗れたかどうかで2つの違ったストーリーが進行する並行宇宙もの。この地下鉄のドアが要するに「スライド式」なわけだが、本作にはエレベーターやビルなどにこのタイプのドアがいくつか出てくる(まあ普通の映画にもよく出てくるだろうが)。★★★

『マン・オン・ザ・ムーン』"Man on the Moon"
コメディアンのアンディ・カウフマンの伝記映画。不勉強ながら、この表現が彼のことを指すのに以前から使われていたのかどうかは知らない。★★★

『スティグマータ/聖痕』"Stigmata"
"stigmata"は、「聖痕」の意味での"stigma"の複数形である。「聖痕」とは、キリスト教の信心深い人の体に、キリストが磔にされたときに受けた傷と同じ位置(手のひらとか足首とか腹など)に、超自然的な傷が生じること。見方と場合によって、良いこととも悪いこととも解釈される。この映画では、ぜんぜん信心していない女性にそういうことが起こる。★★★

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』"Buena Vista Social Club"
ライ・クーダーの同名のアルバムを下敷きにしたドキュメンタリー映画。キューバに昔あった音楽サロンの名前である。Buena Vistaは、米墨戦争の戦場となったメキシコの町の名前として有名。スペイン語でbuenoはgood、vistaはview。要するに「いい景色」である。こういう場合はやっぱり「ソシアル」を使うのか。★★★

『オーロラの彼方へ』"Frequency"
「周波数」。無線で30年前の父親と交信してしまうという準タイム・トラベルもの(実際に移動はしない)である。このような異常現象が、ニューヨークでオーロラが観察されるという珍しい夜に起こったということ。「周波数」という邦題には無理があるということを考えると、この邦題は良く出来ていると言える。原題よりもいいかも。★★★★

『リプリー』"The Talented Mr. Ripley"
パトリシア・ハイスミスの同名の原作の映画化。IMDBを見ると、「完全な」タイトルとして"The Mysterious Yearning Secretive Sad Lonely Troubled Confused Loving Musical Gifted Intelligent Beautiful Tender Sensitive Haunted Passionate Talented Mr. Ripley"という凄いものが記載されている。これは、主人公のリプリーの友人が、リプリーを表現するために使った誉め言葉。この言葉が使われるコンテキストは実に印象的である。邦題はこれで仕方がないのかもしれないが、せめて『ミスター・リプリー』にならなかったか、と思う。★★

『マグノリア』"Magnolia"
"magnolia"は花の「モクレン」。ルイジアナ州とミシシッピー州の州花だが、この映画の舞台はカリフォルニア州である。★★★

『ビッグムービー』"Bowfinger"
出来の悪い劇場未公開作品なので投げている邦題。原題は主人公の映画プロデューサーの名前。★

『パッセンジャー57』"Passenger 57"
飛行機の57番のシートに座っていた乗客、という意味。たしか映画の中で、そういう意味で使われていた。57A、57Bみたいな小分類があるはずなんじゃないの、と疑問に思ったことを覚えているんだが。★★★

『知らなすぎた男』"The Man Who Knew Too Little"
言うまでもないが、『知りすぎていた男』"The Man Who Knew Too Much" (1956)をひねっている。主人公のビル・マーレーが、周囲で起こっている陰謀にまったく気づかないまま世界を救ってしまうというコメディ。ところでこれって文法的に「知らなさすぎた男」が正しいはずだが、穏当な邦題。★★★★

『ダンス・ウィズ・ミー』"Dance With Me"
ボールルーム・ダンスをテーマとするダンス映画。これはいい映画である。主人公の男女のどちらが"Dance with me"と言っているのかよくわからないところが奥が深い(と言うほどのものではないか)。★★★

『ツイスター・インフェルノ』"Night of the Twisters"
「竜巻の夜」。アメリカ中西部の町を、ある晩、いくつものツイスターが襲う。邦題は投げているのでどうでもいいが、「インフェルノ」は「地獄」という意味だとは言え、どちらかというと「灼熱地獄」が連想される。『タワーリング・インフェルノ』は、高層ビルの火事の話だったわけだが、こちらは暴風雨を伴う竜巻現象なので違和感がある。★

『ファントム』"Phantoms"
これも複数形を単数形にしているが、ディーン・R・クーンツの原作の翻訳本も『ファントム』というタイトルで出版された。「幻影」、「幽霊」など、捉えどころのないもの。地下から現れる化け物の話である。★★

『2番目に幸せなこと』"The Next Best Thing"
一見すると直訳のように見えるけれども、原題はむしろ「次善の策」という感じの、否定的なニュアンスを併せ持っていると思う。日本語のタイトルは100%肯定的に見えるけれどもどうだろうか? タイトルの意味はよくわからないが、ヘテロセクシャルの女性とホモセクシャルの男性が、それぞれrelationshipの面で悩んでいて、ある意味で「仕方なく」結婚するのが"the next best thing"なのだと思われる。★★

『TATARI タタリ』"House on Haunted Hill"
これも関係ないタイトルを付けて(しかもカタカナで)、アルファベットまで併記するというバカ邦題。これはリメイクで、1958年の同タイトルの邦題は『地獄へつゞく部屋』だった。「呪われた丘の上の家」である。その家とは、昔の精神病院。★

『白い刻印』"Affliction"
ビデオ化に際してのタイトルは『アフリクション 白い刻印』となった。afflictionは「苦痛」、「苦悩」、あるいはそれらの精神的状態の原因のことを指す。邦題の「白い刻印」は何のことかまったくわからないが、雪に閉ざされた北の方の田舎町を舞台にした映画だから「白い」という言葉を使っているのだと思われる。本作の「苦悩」は、父親による家庭内暴力。いわゆる「アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリックス」の話である。念のため書いておくが、日本語に「アダルト・チルドレン」という表現があるけれども、これは本当は決して「ピーターパン症候群」のようなものではなく、親がアルコール中毒患者だったので子供の頃に苦労した人が、成長してからいろいろと悩んでいる、という現象を指すのである。★

『TABOO タブー』"I'm Losing You"
「タブー」とはまったく関係がないのに、アルファベットまで付けるというバカ邦題。原題は、「私はあなたを失いつつある」だが、文脈によって、「あなたが遠くに離れていってしまうようなの」とか「私の心があなたから離れていくのがわかる」などの意味。まあそういう、複数の人物の心の蠢きを描いた小説/映画である。ちなみに崖からぶらさがっている相手を腕一本で支えているが、力が続かず、もうダメだというときにも"I'm losing you"と言う。★

『エドtv』"Ed TV"
主人公のEdさんの生活を追うリアルTVの番組の物語。なぜか邦題では"tv"が小文字。『エドTV』だとたしかにちょっと変かもしれない。ローマ数字の"IV"と勘違いして「エド」というシリーズのエピソード4と勘違いする人がいるかも、という配慮か? しかし『エドtv』という文字列をずーっと見つめていると、気分がおかしくなってくる。「エビ」に見えてきません? 『Ed TV』というアルファベット・タイトルの方がよかったかも。★★

『チャーリーズ・エンジェル』"Charlie's Angels"
TVシリーズのタイトルがこうだったのだから仕方がないが、「エンジェル」は3人なので複数形でなくてはならない。「アナハイム・エンジェル」とは誰も言わんだろう。『シティ・オブ・エンジェル』も無理に単数形にしていた。不思議な人物「チャーリー」のために活動する3人の女探偵「エンジェル」の物語。★★

『バーティカル・リミット』"The Vertical Limit"
「高度限界」。たぶん下限の意味ではあまり使われない。K2に登る人々の話。★★★

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