お勧め映画、第3回、80年代アメリカ映画篇

 80年代のアメリカ映画を語るのはつらいです。80年代前半はそれまでの映画の残滓。後半に入って新しい才能が出現したと思ったら、その人々は90年代に入る頃から軒並み没落する。結局いまでも勧められるのは、誰もが認める「名作」ばかりになりそうです。この時期はアメリカ以外の国の映画の方がずっと元気だという印象がありました。

 このページで扱っている「没落」した人々には、ニック・キャッスルやジョン・マクティアナンに代表される古典的映画術の延長に新しいものを作った人々と、ジョン・ヒューズ、ハワード・ドイッチ、クリス・コロンバスらの「ヒューズ」人脈とでもいうべき人々がいます。また、フランシス・フォード・コッポラやジョン・カーペンターは、それ以前から作っていて、この期を境にだめになっていく人です。

 ジェームズ・キャメロンは、80年代にデビューした人々の中での唯一の生き残りといっていいのではないでしょうか。で、『タイタニック』と『エイリアン2』または『アビス』のどちらを取るかと言われたらそりゃ後者を取りますが、ちゃんと作り続けているというだけでも非常に珍しい存在です。

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『ミリィ/少年は空を飛んだ』"The Boy Who Could Fly" (1985) ★★★★★
ニック・キャッスル監督。80年代最高の思春期映画だと思っています。監督のニック・キャッスルは、デビュー作の『暗殺遊戯』(1982未公開)、『スターファイター』(1984)と名作を連発しましたが、1989年の『タップ』でだめになりました。主人公のミリィが住んでいる家の巧妙な撮り方に注目。

『プレデター』"Predator" (1987) ★★★★★
ジョン・マクティアナン監督。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の唯一といって良いまともなアクション映画。監督のジョン・マクティアナンは、『ノーマッズ』(1985)での驚愕のデビュー以降、本作、1988年の『ダイ・ハード』と傑作を作りましたが、1990年の『レッド・オクトーバーを追え!』でだめになりました。この映画のマシンガンの乱れ撃ちはとても新鮮でした。

『エイリアン2』"Aliens" (1986) ★★★★★
ジェームズ・キャメロン監督。続篇よりも面白いパート2。1989年の『アビス』も素晴らしい。この人は『トゥルーライズ』(1994)というひどい失敗作を除くと、1980年代から現在にいたるまでちゃんとした映画を作り続けている珍しい人。この映画のタフな女性たちはとても新鮮でした。

『ワーキング・ガール』"Working Girl" (1988) ★★★★
マイク・ニコルズ監督。メラニー・グリフィスが主役を演じるキャリア・ウーマンもの。80年代のマイク・ニコルズは、これが一番良いと思います。これ以外には『シルクウッド』(1983)、『心みだれて』(1986)、『ブルースが聞こえる』(1988)があるけれども、いずれもいまいち。90年代に入って盛り返しているのは凄いと思う。

『シャイニング』"The Shining" (1980) ★★★★★
スタンリー・キューブリック監督。映画がこんなに怖くなりえるなんて、という驚きがありました。揺れない移動カメラは非常に新鮮だった。1980年代のキューブリックには、あと『フルメタル・ジャケット』(1987)があって、こちらも歴史に残る戦争映画。

『フェリスはある朝突然に』"Ferris Bueller's Day Off" (1986) ★★★★
ジョン・ヒューズ監督。主演のマシュー・ブロデリックとともに、非常に新しい感覚の映画が出現したという感じがありました。これは、その前年の『ブレックファスト・クラブ』(1985)の延長線上にあるんだけど、この作品で完成形になった。この後、ジョン・ヒューズという人はいったいどうなるのだろうかと興味津々でいたら、製作と脚本に専念するようになったようで、しかも駄作ばかり。

『恋しくて』"Some Kind Of Wonderful" (1987) ★★★★★
ハワード・ドイッチ監督。ジョン・ヒューズの製作・脚本で成功している珍しい例の1つ。監督のハワード・ドイッチは、デビュー作の『プリティ・イン・ピンク』(1986)がそこそこでしたが、これは大傑作でした。しかしその後がまったくだめで、私が見た範囲では、いまに到るまでまともなものを1本も撮っていない。なお、この映画で主演しているエリック・ストルツ、メアリー・スチュアート・マスターソン、リー・トンプソンの3人も、揃って没落している。

『ベビーシッター・アドベンチャー』"A Night On the Town" (1987) ★★★★★
クリス・コロンバス監督。これがデビュー作。エリザベス・シュー主演のコメディ映画。クリス・コロンバスはこのあと、最低限の仁義は守っているが、大傑作ではないというタイプの映画を作っています。エリザベス・シューは、ちょっと予想のつかない変わり方をしました。

『ゴースト・ハンターズ』"Big Trouble in Little China" (1986) ★★★★
ジョン・カーペンター監督。この作品は、ハリウッド的お気楽アクション映画にお気楽カンフーを取り入れた先駆者的映画として後に回顧されると思います。シリアスな映画が続いていたカーペンターがこういうのを作ったという文脈の中で見ないときついかもしれないけど。ちなみに、1980年代のジョン・カーペンターは、『ニューヨーク1997』(1981)、『遊星からの物体X』(1982)、『クリスティーン』(1983)、『スターマン』(1984)、『パラダイム』(1987)、『ゼイリブ』(1988)となっており、この『ゴースト・ハンターズ』以前はいずれも大傑作であるのに対して、これ以降は1990年代のスランプの前兆を感じさせます。主演女優のキム・キャトラルが良い。

『ワン・フロム・ザ・ハート』"One From The Heart" (1982) ★★★★★
フランシス・フォード・コッポラ監督。1979年の『地獄の黙示録』の次の映画に、こういうミュージカルが出てきたことに驚きました。1980年代のコッポラは、1983年の『ランブル・フィッシュ』(大傑作!)と1986年の『ペギー・スーの結婚』も良いですが、それ以外は1990年代に続くスランプがすでに始まっている。たしかに手堅いんだけどなぁ、という感じ。ちなみにこの映画は製作当時でも時代錯誤的でした。

『バイオレント・サタデー』"The Osterman Weekend" (1983) ★★★★
サム・ペキンパー監督。これが遺作で、全盛期と比べるとたしかにたるいんだけれども、「落ち着いた、貫禄のある現代風アクション」として楽しみました。つまり、ちょっと時代錯誤的。

『ヘザース/ベロニカの熱い日』"Heathers: Lethal Attraction" (1989) ★★★★
マイケル・レーマン監督。ウィノナ・ライダーとクリスチャン・スレイター主演。私が見たなかで、ウィノナ・ライダーが最も魅力的に写っている映画ですが、とにかくこの映画は変です。マイケル・レーマンはこれが処女作。とんでもない人が出てきたと思ったが、これ以降はあまりぴんと来ない。

『ミス・ファイヤクラッカー』 "Miss Firecracker" (1989) ★★★★★
トーマス・シュラム監督。ホリー・ハンター主演。メアリー・スティーンバージェン、ティム・ロビンス、スコット・グレンが共演する非常に地味な映画。私はとにかくこの映画がホリー・ハンターの最高傑作だと信じています。ものすごくチャーミングであるだけでなく、まったく関係はないが、『愛すれど心さびしく』とか『まぼろしの市街戦』のような淡くてなおかつ深い感動を与える名作。

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