クォーターリー・レビュー: 2000年度第1四半期

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概要

2000年度第1四半期はいろいろと忙しく、活動の低下とともに本webサイトの更新頻度も低下した。読書メモへの登録件数は69件で、1か月に平均23件である。映画メモの更新は、昨年末にいったん中断していたが、3月末に再開した。登録件数は15件。

なお、この3月で読書メモを開始してから2年が経過した。3月末の時点で639件。1年で319.5件。1か月で26.6件ということになる。映画メモは開始したのが99年10月。6か月で登録件数は145件なので、1か月で24.2件。

読書メモの69件のうち、フィクションが14件でノンフィクションが55件。昨年の12/20から今年の2/6まで1冊もフィクションを読んでいなかった。時間的制約が厳しくなると、フィクションに手が出しにくくなるという傾向があるようだが、面白そうな新作があまりなかったのも事実である。評価は、5点が15件、4点が18件、3点が26件、2点が7件、1点が3件。おおむね幸せな読書をしたと言えるが、本の選び方が少し保守的だったのかもしれない。

映画メモの15件のうち、5点が2件、4点が3件、3点が4件、2点が4件、1点が2件。しばらく映画を見ていなかったので、つまらないと分かっているものにも敢えて手を出した。

mp3.com鑑賞メモは、1999年の11月を最後に更新していない。mp3ファイルをダウンロードするのが面倒なのが効いている。

読書メモ

フィクション

14冊のフィクションのうち、5点を付けたのは、ジョン・サンドフォードの『一瞬の死角』とポール・リンゼイの『殺戮』の2冊。どちらも中堅作家のシリーズもの。サンドフォードは安定してやや上昇中、リンゼイは不安定で下落もあり。単独で読むと決して傑作とは言えないが、安心して読めるだけでもありがたい。

『カーラのゲーム』のゴードン・スティーヴンスと『ステルス艦カニンガム出撃』のジェイムズ・H・コッブは今後に期待できる。どちらも女性が主人公の軍事ものだが、役柄は対照的で、前者ではテロリスト、後者では駆逐艦の艦長。『死よ光よ』のデヴィッド・グターソンは、前作の『殺人容疑』と比べると出来が良いのだが、今後の勝負は、このくどい描写が合う題材を見つけられるかどうかにかかっているように思う。

ノンフィクション

55冊のノンフィクションのうち、5点を付けたのは13件だが、誰にでも文句なしに勧められるのはそれほど多くない。

『米中奔流』は、ニクソン以来のアメリカ政府の対中政策の変遷を描いたノンフィクションの力作。米中関係に関心を持つ人にとっては必読書だが、アメリカの冷戦以降の世界戦略という観点からも興味深い。特に『文明の衝突』に代表されるような、アメリカの外交戦略に影響を与える地位にある人々のアジア観が、どのような事情から作られてきたのかがよくわかる。

『シビル・アクション』は、アメリカ製のリーガル・スリラーの愛読者にとっては、『アメリカ司法戦略』とともに必読書。現代的なクラス・アクションのはしりともいえる水質汚染事件を扱ったドキュメンタリー的なノンフィクションである。バクチとも言える懲罰的損害賠償訴訟がたしかに正義の実現の役割を果たしているという事情が、経済的に追い詰められる弁護士の姿を通して見えてくる。それだけでなく、話として、ひょっとしたら普通のリーガル・スリラーよりも面白い。

『限りなく人類に近い隣人が教えてくれたこと』は、手話をするチンパンジーの研究を行ってきた研究者による回顧録。扱っているスパンが長く、言語の発達から動物実験までの幅広いトピックが扱われている。しかしそれ以上に、この本はリーダビリティが高く、単純に面白い。

『墜落の背景』は、日本航空でもっぱら航空事故への対処に関わってきた人による告発の書。航空業界の内幕話も面白いが、全体的に著者の熱意が好ましい。読んだら飛行機に乗るのが怖くなることは間違いない。

その他は、興味がある人には勧められるもの。

『キリスト教の揺籃期』『受難物語の起源』は、キリスト教関連。その前に、訳者の加藤隆による『新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか』『「新約聖書」の誕生』を読むことをお勧めする。ほとんどの人にはこの2冊で十分だろう。なお、今後、この加藤隆という人の著書や訳書が出たら買い。

『日本の経済発展と金融』は計量経済学の本格的な本。『信用リスク管理への挑戦』はファイナンス理論の「信用力の計量化」の分野の啓蒙書だが、実は長銀批判の本でもある。『大企業解体』は著者の奥村宏の従来からのテーマ「法人資本主義」の延長線にある論考で、彼の本を読んだことがない人にも勧められる。『それでも新資本主義についていくか』はニュー・エコノミー批判。たぶん想像するよりもずっとまともな内容であることに驚くだろう。

『汚れ役』は、裁判を受けている味の素の総務部員の告発の書。企業と総会屋の関係に興味を持っている人には必読の書。『地球温暖化の真実』は、地球温暖化や環境問題に関心を抱いている人にお勧め。科学がこれらの問題にどこまで迫っているか(または迫っていないか)を、科学者たちが正直に語っている。『沖縄の自己検証』は、基地問題を含む沖縄の抱えている問題に関する、あまり大きな声では語られることがない議論。

映画メモ

15件のうち、5点を付けたのは2本。これは実はけっこう高い頻度である。4月27日現在、167本のうち5点をつけたのは10本しかない(しかもそのうち2本は旧作)。

『メリーに首ったけ』は、下品ではあるが、きわめて良く考えられている大傑作。ものすごく観客を選ぶ映画ではある。

『翼のない天使』は、『シックス・センス』のM・ナイト・シャマランの実質的なデビュー作。非常に地味な映画だが、きれいに作られていて、並み大抵ではない才能を感じた。

どちらも、見る前は面白くないだろうと思っていたので、心地よい驚きだった。

4点をつけたものは3本。

『マグノリアの花たち』は、ハーバート・ロスの1989年の作品。ジュリア・ロバーツが良かった頃の映画ともいえるが、大女優たちの共演が楽しい。

『スリーピー・ホロウ』は、ティム・バートンのゴシック・ホラー。首が飛ぶSFXと、主人公たちよりも魅力的なさまざまな脇役が記憶に残りそう。この作品はしばらく経ってからの方が評価が上がるような気がする。

『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』は、『ザ・グリード』のスティーヴン・ソマーズの新作。期待に違わず安定して面白いが、何よりも映画を作る上での姿勢に一貫性があるところが興味深い。堅実な小判鮫商法というべきか。

今後の見通し

書籍のフィクションの部での全体的な不作はやはり気にかかる。もしかしたら、この「翻訳エンタテインメント」の分野はすでにピークをつけて凋落しつつあるのかもしれない。クオリティの面でこれらに追いついている日本人作家は依然としてほとんどいなさそうだが、そろそろ探索を開始するべきかも。エンタテインメント以外の分野で何かいいことが起こっているというニュースは聞かない。

一方、ノンフィクションの分野では、翻訳物、日本人の手によるものを問わず、良いものがコンスタントに出現しているように思われる。(1) グローバリゼーションとアメリカの行方、(2) 外国人が日本語で書いた本、(3) 科学技術の進歩による人間の変容、あたりの大きなテーマを今後も追っていく予定だ。

映画は、約3か月のブランクを取り戻した後が楽しみ。有名どころを一通り消化したら、しょうもなさそうなものにも手を出していけるだろう。1か月に20本のペースはキープしたいのだが、難しいかもしれない。

webコンテンツに関しては、「読書メモ」と「映画メモ」はいままで通り進めるつもりだが、その他は流動的。webサイトをいじる暇があったら、本を読み、映画を見たいというのが本音だ。

中期的計画(1年ていどのスパン)

長期的計画(数年ていどのスパン)

2000/4/28

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