クォーターリー・レビュー: 2000年度第2四半期

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概要

2000年度第2四半期も読書や映画鑑賞に専念できない状況が続いた。読書メモへの登録件数は75件で、1か月に平均25件。映画メモへの登録件数は69件で、1か月に平均23件。

サイトの開始時からの累積件数は、読書メモでは714件、1か月に26.4件。映画メモでは220件。1か月に24.4件。

読書メモの75件のうち、フィクションが13件でノンフィクションが62件。ノンフィクションへの偏りは進行している。評価は、5点が14件、4点が21件、3点が26件、2点が10件、1点が4件。分布はそれほど変動がない。

映画メモの69件のうち、5点が5件、4点が9件、3点が25件、2点が21件、1点が9件。もう少し平均を下げたいところ。

mp3.com鑑賞メモは、1999年の11月を最後に更新していない。mp3ファイルをダウンロードするのが面倒なのが効いている。

読書メモ

フィクション

13冊のフィクションのうち、5点を付けたのは、マイクル・コナリーの『わが心臓の痛み』、フレデリック・ブッシュの『娘たちは消えた』、クレイグ・ホールデンの『夜が終わる場所』の3冊。マイクル・コナリーの安定感には驚くべきものがある。なお、クレイグ・ホールデンはいままで読んでいなかったのを悔やまれる、私にとっては「新顔」の作家。

『犯罪捜査官』のマーティン・リモンは、今後、別シリーズを書くのであれば注目に値する。『ハンニバル』のトマス・ハリスは、ティム・バートンが『バットマン・リターンズ』の後に『マーズ・アタック』を作ったようなものだと考えれば、今後も注目しなければならないことは間違いない。

ノンフィクション

75冊のノンフィクションのうち、5点を付けたのは11件。

『音楽ジャンルって何だろう』は、この世の「音楽ライター」の書く文章へのアンチテーゼとして提出された正統派の本と考えるべきか。業界雀であることがサブカルチャー評論家の資格であると思いこんでいる人々への一撃。ただし、その一撃のインパクトは著者が願うほどには強くないだろう。そこがまたいい。ちょっと私の趣味が入りすぎの高得点。

『不平等社会日本』は、継続的に行われている社会調査をベースにした日本社会の階層論。この調査をもとにした他の著者による他の本を読んでみたいと思わせる、良心的な入門書。

『脳のなかの幽霊』は、幻肢などの研究で得られた神経学的な知見から、従来は形而上学の担当だったさまざまな事象にまで考察を広げる素晴らしい入門書。この人が特異だということもあるんだろうけれども、とりあえず「自然科学者」がここまで踏み込んで公に発言するという状況は、ちょっと前では考えられなかったことだという感慨がある。

『権力の失墜』は、ボブ・ウッドワードのファンは一応目を通すべきもの。クリントン大統領のホワイトウォーター/モニカ・ルインスキー・スキャンダルに関する新情報が満載である。

『グローバリズムという妄想』は、グローバリゼーションに対する形而上学的なヨーロッパ型社会経済学からの形而上学的な批判。その限りにおいて、非常に良く書かれており面白い。

『封殺された対話』は、ペルーの大使公邸人質事件で大使館員として最後まで人質に取られていた著者が書いた本。今四半期の最重要作である。

『日本の警察がダメになった理由』は、いろいろな欠点はあるものの、昨今の警察スキャンダルの背景事情をわかりやすく指摘しているという点で重要。

『自自公を批判する』は、自自公体制を批判する自民党の国会議員が、自らのwebサイトの内容をもとに作った本という点で斬新な内容を持つ。残念ながら著者の白川勝彦は、6月の選挙で破れてしまい、国会議員ではなくなった。今後の活躍を期待する。

『進化と人間行動』は、大学教養レベルの進化論と進化心理学の入門書。

『日本経済の油断』は、2000年のうちにアメリカ経済が失速し、世界的な景気後退が起こるとする予言の書。世の中のあらゆる人がいろんな理屈をつける中で、ほとんど建設投資循環(クズネッツ・サイクル)だけに注目するというその姿勢が正しいかどうかは、まもなくわかる。

『競争力』は、『Made in America』以降のアメリカの急速な経済発展の原因を探る本。キーワードは「生産性」である。

映画メモ

69件のうち、5点を付けたのは5本。

『ブッチャー・ボーイ』は、ニール・ジョーダンの最高傑作の1つといってもいいのではないかと思うぐらい良い出来。ジョン・アーヴィングっぽい原作の映画化というカテゴリー(単純にジョン・アーヴィングの原作の映画化を考えてもらえばよいが)の中では、センスの良さが断然に光っている。『オリバー・ツイスト』などの「騒々しい少年像」を扱った映画の中でも、これほど騒々しい奴はいなかったんではないかと思うぐらい主役の少年、イーモン・オーウェンズが良い。

『真実の囁き』は、ジョン・セイルズの天才が存分に発揮されている大傑作。あらゆる要素が良いのだが、とりわけ最後のオチの付け方が、セイルズ固有の「脱力感」と「政治的な正しさ」のコンビネーションのおかげで、想像もつかない方向に暴走している。クリス・クーパーがかっこいい。将来、クリント・イーストウッドのようなポジションを確保するんではないか。

『ディディエ』はフランス映画。犬が人間になってサッカーをするという話。ちょっと過大評価かもしれないが、クライマックスにいたるまでの物語の進め方がものすごくしゃれていて、楽しめた。

『ファミリー・ゲーム/双子の天使』は今四半期の最高の収穫。『双児のロッテ』の映画化で、ヘイリー・ミルズ主演の『罠にかかったパパとママ』のリメイクである。

『アンダーグラウンド』は、エミール・クストリッツァの映画。

4点をつけたものは9本。

『マーサ・ミーツ・ボーイズ』は、イギリス製のロマンチック・コメディ。『ノッティングヒルの恋人』の廉価版。『ノッティングヒルの恋人』に対する反感から点数が高くなった可能性あり。

『犯罪心理捜査官 最終章』は、オーストラリア映画。『犯罪心理捜査官』のシリーズとはまったく無関係のもので、奇妙な色気を持っていた。意外性から点数が高くなった。

『第一の嘘』は、オーソン・ウェルズの未完成の脚本を映画化したもの。正統的な因縁ドラマに真っ向から挑戦していて完成度が高い。

『アウト・オブ・サイト』は、ライト路線に転向したスティーヴン・ソダーバーグの力量に感動した。ジョージ・クルーニーとジェニファー・ロペスが美しいというだけで驚いた。

『NY検事局』は、シドニー・ルメットの超安定ぶりを楽しむ映画。ただし地味。

『ロミーとミッシェルの場合』は、お気楽バカ映画。拾い物であった。

『感染』は低予算の地味な映画だが、不思議な魅力がある。なんでこれに惹かれたのか、いまもって理解不能。

『フリー・マネー』は、アメリカ映画好きのフランス人が昔懐かしいハリウッド映画を撮りましたという感じの時代錯誤的な映画だが、それが心地よい。

『ミミック』は、ギレルモ・デル・トロのハリウッド進出作。久しぶりに怖い映画を見て怖くなった。

今後の見通し

書籍のフィクションの部では、買っておきながら途中で挫折している本が増えつつある。こちらの体力が低下したのか、作品自体に問題があるのかわからない。海外ミステリ系統の諸出版社が、ミステリ・プロパーではない作家がミステリを書いたという感じの本を物色しつつあるように思われる。しかしいまのところこれというものに出会えていない。

ノンフィクションの分野では、依然として良好な読書体験が得られている。(1) グローバリゼーションとアメリカの行方、(2) 外国人が日本語で書いた本、(3) 科学技術の進歩による人間の変容、あたりの大きなテーマを今後も追っていく予定だ。

映画は、新しめのものを一通り消化し、見落としていた旧作を物色していけそうだ。最近ではロン・アンダーウッドとかマイクル・コーンの落ち穂拾いをやっている。1990年代のアメリカ映画は非常に良くなっているという印象が強まるばかり。

webコンテンツに関しては、前回に「中期的計画」として掲げた項目のうち、「amazon.comへのリンクをつける」と「映画メモの検索機能の充実」を実現することができた。amazon.comのページはISBNをキーとしているのですっきりしている。

中期的計画(1年ていどのスパン)

長期的計画(数年ていどのスパン)

2000/7/2

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