クォーターリー・レビュー: 2000年度第3四半期

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概要

2000年度第3四半期は、『ファイナルファンタジーIX』と『ドラゴンクエストVII』という2大事件のために、他の活動にしわよせが来た。読書メモへの登録件数は74件で、1か月に平均24.7件。映画メモへの登録件数は65件で、1か月に平均21.7件。

サイトの開始時からの累積件数は、読書メモでは788件、1か月に26.2件。映画メモでは279件。1か月に23.3件。映画メモは開始から1年が経った。年間300本には達しなかったが、まあいい調子と言えるだろう。

読書メモの74件のうち、フィクションが17件でノンフィクションが57件。依然としてノンフィクションに偏っているが、9月末に集中してフィクションを読んだために前期よりはフィクションが多くなった。評価は、5点が21件、4点が20件、3点が20件、2点が6件、1点が7件。分布はいくぶん高い方に寄った。

映画メモの65件のうち、5点が7件、4点が10件、3点が18件、2点が18件、1点が12件。もう少し平均を下げたいところ。

mp3.com鑑賞メモは、1999年の11月を最後に更新していない。そろそろどう処置するのかを考えなくてはならない。

読書メモ

フィクション

17冊のフィクションのうち、5点を付けたのは、スコット・トゥローの『囮弁護士』とブライアン・フリーマントルの『屍体配達人』の2冊。どちらもベテラン作家で、トゥローが1作ごとに新たな高みに登っていくのに対し、フリーマントルは完全にできあがっていてなお、新境地への挑戦を止めていない。

『キリング・フロアー』が処女作であるリー・チャイルドは、今後に注目。『この世の果て』のクレイグ・ホールデンと『水の棺の少年』のスティーヴン・ドビンズは、もっと他のものを読みたい。

ノンフィクション

57冊のノンフィクションのうち、5点を付けたのは19件。

『生と死のミニャ・コンガ』は、日本人の手による登山事故の手記として最高レベルに入る本だった。映画のシナリオのような因縁話。

『縄文農耕の世界』は、最近はやりつつある縄文時代観の見直しに、生物学がどのように貢献しているかをわかりやすく解説した本。著者自らの研究を紹介している部分も一般論の部分も面白い。

『裕次郎と日活アクション』は雑誌『平凡』に掲載された写真を集めた写真集である。関心のない人には勧められないが、この時期の日活のスターたちの輝きはぱらぱらと立ち読みするだけで十分に伝わるだろうと思う。残念ながら、多くの書店で立ち読み防止のためにビニールで包まれているようだが。

『マクロ経済政策の課題と争点』は、日本経済が陥っていると考えられる「流動性のわな」に関する考察と論争を集めた論文集。

『中盆』は、大相撲で行われている八百長の告発。八百長の背後にあるメカニズムの記述が分析的で面白い。

『日本の階層システム1』は、日本の社会階層をテーマとする論文集のシリーズの1冊目。全般的に地味な話だが、このテーマの広さが伝わってくる。

『宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる』は、天文学と宇宙論の変遷を追ったノンフィクション。数式をまったく出さずに、研究者たちの人間ドラマとして、この分野の変遷を描いている。なぜか読み始めるとやめられないページ・ターナーであった。

『社会的ジレンマ』は、囚人のジレンマに代表されるゲーム理論上のジレンマを、従来のゲーム理論のような古典的な「経済人」をベースにしてではなく、進化心理学で扱われるような人間をベースにして解くという話。

『サイエンス・ウォーズ』は、ソーカル事件を学者コミュニティの中で繰り広げられている「サイエンス・ウォーズ」の1つの現われとして位置づける、科学史的な論考集。ソーカル事件以外のトピックを扱っているものが面白い。

『機長の告白』は、航空機の事故につながるさまざまな要因を、現役のパイロットの立場から詳しく解説する興味深い本。門外漢にはわかりにくいことだが、こういう分析は一種の「タブー」というか、業界内での秘密となっているようで、このような一般向けの本が書かれたことは重要だと思われる。

『地下暴落はこれからが本番だ』は、住宅用の土地の価格は今後も暴落するのだから、不動産を取得するのはまだ待つべきだと論じる啓蒙書。著者は証券アナリストで、変な制約に捕われない自由な思考が面白い。これは良書である。

『「リサイクル」汚染列島』は、多くの形態のリサイクルがかえって自然破壊につながるものであると警告する啓蒙書。アカデミアを含むリサイクル業界に対する厳しい批判もある。

『ひめゆり忠臣蔵』は、新左翼による沖縄論。おちゃらけてはいるが、骨太の評論である。

『代議士のつくられ方』は、小選挙区制度の下での自民党の「どぶ板選挙」の本格的な実証研究。内容も面白いが、著者が韓国人である点が注目に値する。

『日本人を知らないアメリカ人 アメリカ人を知らない日本人』は、国際的なコミュニケーションのずれを論じる比較文化論。バブル期に書かれた本なので、内容はそうとう古いのだが、エッセンスはいまでも通用する。

『弁護士から裁判官へ』は、人権派弁護士を経て最高裁判事となった著者が最高裁判所の内幕を記している本。最高裁のロジックに関する記述が面白い。

『ゼロ金利の経済学』は、すでに解除された日銀のゼロ金利政策に関するドキュメンタリー。政策決定の過程を詳しく追っている。

『転換期の日本経済』は、平成不況について論じている、これまで読んだなかで最も説得力のある本だった。

『からごころ』は、保守派論壇で重宝されているらしい著者の、若い頃の評論集。

映画メモ

65件のうち、5点を付けたのは7本。

『ジャージー・デビル・プロジェクト』は、ビデオ撮影とPC上での映像編集を利用した新世代の低予算映画。その範囲で非常に質が高いだけでなく、映画一般の中に置いても十分に通用する佳作であった。

『ベイブ/都会へ行く』は、前作の『ベイブ』を数段階は超えた大傑作。『マッド・マックス』と『マッド・マックス2』のような関係にある。

『パッション・フィッシュ』はジョン・セイルズ。下半身が麻痺した元女優と看護婦の間の友情物語が、完璧に近い形で語られる。

『ジャッキー・チェン マイ・スタント』は、ジャッキー・チェンが自らの映画製作の内幕を語るTV番組をビデオ化したもの。「香港映画は予算が少ない」と繰り返して語るジャッキーの姿が美しい。

『罠にかかったパパとママ』は、『ファミリー・ゲーム/双子の天使』の元となった1961年の映画。リメイク版の方が良いが、こちらも良くできている。

『ポーリー』は、喋るオウムの冒険記。美しい映画。

『愛が微笑む時』は、ロン・アンダーウッドの1993年の作品。感動的な幽霊もの。

4点をつけたものは10本。

『乱気流/グランド・コントロール』は、ストーリーがほぼ航空管制官が働く管制室だけで進展するドラマが、ぎりぎりのところで陳腐にならずに描かれている佳作。

『奇蹟の降る空/NIGHT WORLD』は、昔のSF小説の「善意」の部分を素直に描いている佳作。TVムービーとしての限界はあるものの、見ていて心地よい。

『カーラの結婚宣言』は、いろいろと問題もあるにせよ、知的障害者を演じる主役2人の良さのために見られる映画に仕上がっている。その点だけでも、高く評価するに値する。

『シックス・センス』は、根本的に作り方が間違っている気もするのだが、安定している。

『フライド・グリーン・トマト』は、メアリー・スチュワート・マスターソンとメアリー=ルイーズ・パーカーの2人が強烈に良い。それ以外の部分がなければ大傑作となっていたであろうに。

『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』は、シリーズ4作目のホラー映画だが、実際にはパロディ/コメディ映画となっていた。後半が弱いが支持する。

『マンハッタン恋愛事情』は、演劇タイプの映画で、一般受けはしなさそうだ。なんとなく気に入った。

『陽だまりの庭で』は、フィリップ・ド・ブロカである。奇妙な映画。

『アップルゲイツ』は、マイケル・レーマンの1990年の作品。奇怪である。

『ゴージャス』は、1980年代の日本映画を思い出させる、生き生きとした香港映画。ジャッキー・チェンのアクションが良い。

今後の見通し

書籍のフィクションの分野は、そろそろ関心が蘇ってきたような感じがする。この勢いに乗って、周辺のジャンルにも手を伸ばそうかと思っている。

ノンフィクションの分野では、依然として良好な読書体験が得られている。(1) グローバリゼーションとアメリカの行方、(2) 外国人が日本語で書いた本、(3) 科学技術の進歩による人間の変容、あたりの大きなテーマを今後も追っていく予定だ。

映画は絶好調。少々だめな映画でも、良い点を積極的に見つけ出していきたいという前向きな態度を持てている。今期では、『ジャージー・デビル・プロジェクト』と『カーラの結婚宣言』を楽しめてしまったことが我ながら驚きだった。

webコンテンツに関しては、特に変化はなかったが、別件で検索関連のCGIスクリプトに手を入れている。サイト全体を対象にした(全文検索ではない)キーワード検索を可能にすることで、面白い効果が出てくるかもしれない。ただし、これを本サイトで運用するのはもうちょっと先のことになるだろう。

全文検索は、ローカルなステージング・サーバーではNAMAZUを使って実現しているが、現在のホストで効率的に運用するのは難しそうだ。ホストの移転も含めた長期的な課題。

中期的計画(1年ていどのスパン)

長期的計画(数年ていどのスパン)

2000/10/3

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